アルノルト・ベックリン

2020-08-13

娘マリアのために描かれた代表作「死の島」!彼の作品に見られる幻想的な特色について

人物の概要

アルノルト・ベックリン(1827年10月16日~1901年1月16日)は、19世紀のスイス出身の象徴主義の画家である。

ベックリンの代表作「死の島」は1880年~1886年にかけて制作した油彩作品で、現在は5作が確認されており、アドルフ・ヒトラーも所蔵していたといわれている。

19世紀末のヨーロッパ美術界はフランス印象派の全盛期であったが、ベックリンは対照的な象徴主義・世紀末芸術の代表的画家のひとりとして活躍した。

代表的な作品

代表作『死の島』5作品

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ベックリンは、1827年にスイスのバーゼルで生まれ、青年期以降ヨーロッパを転々としているが、生涯のほとんどをドイツとイタリアで過ごしている。

1845年から2年間、ドイツのデュッセルドルフで美術を学ぶ。1850年に初めてイタリアを訪れ、7年間滞在し、ローマのドイツ人画家たちとの交流を持った。1874年~1885年までフィレンチェで過ごしたが、この時期が彼の円熟期で「死の島」などの代表作が描かれている。

「死の島」は非常に人気があり、1880年~1886年の間に5つのバージョンが描かれた。この作品は、幼くして死去した娘マリアが埋葬されていた、イギリス墓地を部分的に呼び起こす内容となっている。

暗い空の下、基地にある小さな孤島を目指し、白い棺を乗せた小舟が進んでいく様子を描いた異様でミステリアスな作品である。

イギリス墓地の近くにベックリンのアトリエがあり、最初に描かれた「死の島」のバージョンは夢想できるような雰囲気の絵を要望していた未亡人ベルナによって依頼された。その後、ドイツでは一般家庭に複製が飾られるほどの人気を博したのだ。

1作目はバーゼル美術館、2作目がメトロポリタン美術館、3作目でアドルフ・ヒトラーが所有していた作品でベルリン美術館に、5作目はライプツィヒ造形美術館が所蔵しているものとなっている。因みに4作目は第二次世界大戦中に所在不明となってしまった。

ベックリンの作風は、写実的で精細且つ奇々怪々な要素が含まれているため、20世紀のシュルレアリスム絵画にも大きな影響を与えている。

「死の島」は不気味で神秘性が見られる。ベックリン自身はこの絵の意味について公的には説明はしていないのだが、夢の絵だと話していたという。タイトルは彼が付けたのではなく、1880年にアレクサンダー・ギュンターに宛てた手紙に書かれていたフレーズから、画商のフリッツ・グリッチが付けたとされる。

この作品シリーズは、画家だけではなく、文学や音楽にも影響を与えている。ロシア出身の作曲家セルゲイ・ラフマニノフは、交響詩「死の島」を作曲した。

ベックリンは1893年にトスカーナに永住。1901年に死去した。

「死の島」以外にもたくさんの作品があり、アドルフ・ヒトラーは彼の作品を好み、11点所有していたほどの収集家であったことが知られている。

ベックリンの作品には、古典的な建築物と人物が描かれる。異様な雰囲気と夢幻的な彼の世界観は、身近に感じられながらも、彼にしか描けない心の奥底の深い闇が影響されているのだろうと感じさせられる。そんな印象を抱く者もいるのではないだろうか。